変人日記−今治編− 山路博之
八月二十六日(月)【脳内モルヒネ】
その日は朝から暇だったので、本屋に出かけることにした。
「今月の一押しコーナー」で、私の目を引いた本が一冊あった。
春山茂雄の『脳内革命』である。
ミーハーな性格も手伝って、その本を購入することにした。
『脳内革命』の内容を簡単に述べるとこうである。
「まず、物事を肯定的(プラス的)にとらえる。そうすることによって、脳内モルヒネが出て健康になるわけである。」
夕方過ぎ、私はまるで〈モルヒネを打たれた患者〉のように〈脳内モルヒネ信者〉になっていた。
「神様、仏様、春山様」と、すっかり「脳内モルヒネ、脳内モルヒネ…」と、お経のように唱えていたのである。
単純な私は早速、晩ご飯から試すことにした。
晩ご飯のおかずは、私の嫌いな魚料理であった。
私はニコニコしながら、魚にパクついた。
そんな私の意味のない笑顔に当然、家族の者は異様な感じを覚えていた。
心配して母親が、「どうしたの?」と尋ねる。
すると私は、まってましたとばかりに「脳内モルヒネじゃ!」と得意げに答える。
それを聞いた妹が、「バカじゃん」と呟く。
「なに〜!」と、私はかっとなって怒りだした。
こうなると、もう脳内モルヒネどころではない。
結局、兄妹ゲンカをはさんだ賑やかな晩ご飯になった。
(脳内モルヒネを出すにはまず環境改善が大切だな)等と、訳の分からぬことを考えながら床に就くのであった。チャンチャン
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